2014-07-25
趣味でさえも人生の教えに通ずる
創業者として30数年、創業者の責務として何をするにも四六時中、常に頭の中は会社やお客様の事を考えてきました。
ふと振り返ると、何十年とまともに休息を得た記憶がありません。
創業者というのは、私に限らず皆同じような思いをしているのではないでしょうか。
生ある限り創業者である私は、何度か体を壊してきました。
思い詰め、体を壊すその前に、趣味や娯楽を通じて適度に「ひと息」つくことが創業者の責務を持続させる為に必要な事なのでしょう。
その為には仕事を「割り切る」決断も必要となります。
還暦を過ぎて3年、私の余生は仕事だけに限らず、多くの趣味にも時間を費やしたいと考えています。
四季の中で私の最も好きな季節が「夏」。
そして私の中では「夏」といえば「鮎釣り」。
つい先日の事、時間を作りようやく趣味の「鮎釣り」に勤しむことができました。
釣りの醍醐味は獲物を「釣り上げる事」はもちろん、「待つ事」も含まれます。
獲物を見つけ、今か今かと待つ時間は例え１時間であろうとも、釣り人にとってほんの数分にしか感じません。
その時間は仕事も何もかも忘れさせ、気持ちをリセットしてくれるのです。
そして、「鮎釣り」を没頭するにはもう一つ理由があります。
「釣り」には人生や仕事に通ずるものがあるからです。
古代中国の哲学者「老子」の言葉です。
「魚を与えれば一日飢えをしのげる。
魚の釣り方を教えれば、一生食べていける。」
目先の利益に捉われず、自分自身で利益を生み出す方法を模索し、実践せよ。
この格言は感銘と共に考えさせられます。
私が常日頃、従業員を教育する中で「経営者の立場で物事を考えなさい」と指導していることと通じるのです。
「釣り」に関する人生の格言、奥深い哲学はこの他にも多数存在します。
昨年のこの時期は腰を痛め、思うように「鮎釣り」ができませんでした。
その分、今年は気合が入ります。
釣り竿とライン（釣り糸）を新たに新調、昔は釣り糸の事をテグスと呼び、糸の太さ直径が0.8mm程でしたが、今はその10分の1程。髪の毛よりも細く、且つ強度はさらに増しています。
日本の技術は日進月歩。趣味の道具でもこれほどの技術の進化に感心しました。
竿は敏感に鮎の動きを伝え、ライン（釣り糸）は鮎の遊泳を妨げない程水切りが良く感じます。
道具の賜物かどうかはわかりませんが、勇んで挑んだ「鮎釣り」はおよそ2時間半でなんと11匹も釣り上げ、大興奮の一日となりました。
時間を忘れる程集中し、釣り上げた瞬間の喜びは幼い頃に覚えた感動、今も変わらず「童心」に還れるひと時でもあるのです。
自然と戯れる事は、日常では感じることのできない物の見方や、感情、癒しなど多くの事を学ぶ事ができます。
私自身も鮎釣りから得た発見や出逢いは多く、それは今も人生に活かされています。
「ギューン、グッグッグッ」
激しく上下にたわむ竿、昂る気持ちを必死に抑え、獲物の動きを見極めます。
引き上げるタイミングを計り、指先に全神経を集中。
獲物との駆け引きを制した瞬間、湧き上がる悦びはピークを迎えました。
その感動は、遠いあの日と同じ・・・
photo credit: MGM_Photos via photopin cc
初夏の太陽、水面に反射する光の結晶は幾層にも連なるまるで直線の連凧。
川のせせらぎは、木々の隙間から我先にと吹き出す薫風（くんぷう）を呼び寄せ、遠くでこだまするセミの大合唱がこれからの暑い日々を予感させます。
麦わら帽子に草鞋（わらじ）、屈託のない笑顔で竹竿を垂らす少年の師は自然でした。
少年は、鮎釣りから自然を学んだのか、自然に触れ合い鮎釣りを覚えたのか・・それもまた、自然から教わる事なのでしょう。
