2011-09-20
豊かさ
社長業をしていると、必要以上に装飾品で着飾り、物的価値の高いものを多く手に入れるなど、自己堅持欲の強い人によく出会います。
以前ある同業者のトップと面会した時の話です。
彼はスポーツタイプの高級外車を乗り回し、ブランド物を
身にまとって私に自慢するのです。
そんな時、私は褒めてあげます。
「すごいですね。その車2000万位するんじゃないですか?」
すると彼はすごく喜び、意気揚々と自慢の品をいくつも出してきました。
しかし、心の中では
「その資金で展示場でも建ててあげれば、部下たちも仕事がとれ、社会貢献にもなるだろうに・・・。」
と思ってしまいます。
また、彼は部下から偏見の目で見られていることも伺えました。
人の心の大きさはそれぞれですが、彼の心の満足はその高級車であったのでしょう。私は彼の事を「2000万の男」と心の中で呼んでいます。
私はそんな人たちに会うたび、船井総研会長の船井幸雄氏との出来事を思い出します。
- 今から8年程前 -
船井会長のご自宅をお世話になることになり、私は喜び勇んで東京へ向かいました。
会長のご自宅となれば「さぞかし立派な豪邸だろう。」という勝手なイメージでしたが、いざ蓋を開けてみれば全く正反対なものでした。
何とか船井会長にふさわしい立派な作品に仕上げたいと意気込む私と会長の間には、こんなやりとりが行われました。
赤塚「会長、最後の住宅なんですからもうちょっと予算をくださいよ。」
船井「赤塚君、夫婦二人で住む住宅なんだこの予算でなんとか頼むよ。」
赤塚「私も職人。魂のこもった最高の住宅にしますから・・・。」
結局、数時間の打ち合わせの末、予算の話もまとまらないまま、船井邸をあとにすることになりました。
- 数時間後、新潟へと戻ってきました。-
意気消沈して事務所のソファーに腰を下ろすと、一通のFAXが届いているのに気づきました。
- 赤塚様へ -
大将というものは・・・
家来に敬われているようで、
絶えず落度を探られているものだ。
恐れられているようで侮られ、
親しまれているようで疎んじられ
好かれているようで憎まれいるようなもの。
大将というものは・・・
絶えず勉強せねばならぬし、
礼儀もわきまえねばならぬ。
よい家来をもとうと思うなら・・・
わが食へらしても
家来にひもじい思いをさせてはならぬ。
自分一人では何も出来ぬ。
これが三十二年間
つくづくと思い知らされた家康の経験ぞ。
家来というものは・・・
禄でつないではならず、
機嫌をとってはならず、
遠ざけてはならず、
近づいてはならず、
怒らせてはならず、
油断させてはならぬものだ。
ではどうすればよいので?
家来には
惚れさせねばならぬものよ・・・
(徳川家康 大将のいましめ)
これは、私を先ほど見送ってくださった
船井会長から送られてきたFAXの文章です。
最後に付け加え
「私は36年間これを基本にしている。」
とあるだけでした。
私は船井会長の人柄と優しさを深く感じました。
さすが経営の神様とまで呼ばれた方。
トップたるもの質素倹約に慎み、尊敬されなければ部下は命がけで働かない。
心が満たされている人ほど飾らず、満たされていない人ほど飾りたがる。
つまり、本当に豊かな人とは外見ではなく内面を大切にし、周りに対しても良き手本となるように努める。
私も還暦を迎え、次の人生のステップを踏むこととなりました。
船井会長ご夫婦のように、心豊かに今後の人生を過ごせていければ幸せです。